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【すまい確保】福祉映画探訪

 新年度が始まり、はや3週間――

 

 新社会人・新学生の皆さんはいかがお過ごしでしょうか?新しい環境にはもう馴染めましたか?社会人ン年目の私からできるアドバイスはただ一つ、とにかく無理をしないこと!!徳川家康の言葉に「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し」というものがあります。長い人生で常に全力疾走では疲れてしまいます。休むべき時にはしっかり休むことが長続きのコツですよ。

 

 いつもは「大田区生活支援付すまい確保事業」に関わるブログを寄稿していますが・・・たまには私の趣味の話も少しだけ。実は―――というほど大げさではないのですが私の趣味は「映画鑑賞」です。年間100本ほどですが、DVD/Blu-rayを購入して自宅でゆっくり鑑賞することをなによりの楽しみにしています。

 

 そこで今回は!!有隣協会のハンフリー・ボガートこと米澤がおくる「福祉職なら絶対に観ておきたいこの1本」と題しまして、福祉に関わる映画を2本ご紹介したいと思います。

 

最初にご紹介したいのが


「カッコーの巣の上で」

 制作:1975年 アメリカ

 主演:ジャック・ニコルソン

 

 1962年の原作小説と共に有名な映画であり、「そんなの知っているよ」という方も多いかもしれませんが、まだ観ていない方やこれから福祉・医療職を志す方のためにもぜひ紹介させて下さい。

 

 主演は上にも書きましたがジャック・ニコルソン。1989年の「バットマン」のジョーカーや「シャイニング」にも出演しており、迫力のある演技が印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

 

 あらすじとして――

 

 ある罪を犯した主人公は精神疾患を訴えれば刑務所への収監を逃れられると知り、詐病を利用して精神病院へ入院することとなります。健常者でありながらも反社会的な気質をもつ主人公は病棟スタッフや入院仲間との関りの中で様々なトラブルを起こしていきます。そして1950年代における精神科治療の暗部に焦点を当てたラストは福祉職のみならず現代においても大きな課題を投げかけています。

 

※イラストは映画と関係ありません。


 と、かなりあっさりしたあらすじに留めさせていただいておりますが、今回のこの映画を「福祉職が観ておきたい」として紹介したのは、この映画のテーマの一つに「支援者と被支援者の対立」が描かれていると感じるからです。あらすじでも少し触れましたが、娯楽や自由を求める主人公は病院内の規律を重視する病棟スタッフと激しく対立します。主人公の視点に没入して映画を観れば看護師長の態度ややり方は「頑固な病院スタッフ」「事務的で人間味のない看護師長」という風に映るでしょう。一方、一度でも病院や施設で勤務したことがある方であれば「施設内の秩序維持」「希死念慮を抱える患者の安全」といった視点からの共感があるのではないでしょうか。

 

 もちろんこれは映画の中、それも半世紀以上も前の異国の精神病院を舞台にした話であり、現代日本における治療スタンスやスタッフの質とは比べ物になりません。それでも私たち福祉職の意識や技術は常に錬磨されなければ、容易に被支援者を抑圧し、「治療・支援」の名前を隠れ蓑にした横暴がまかり通ってしまうこととなります。

 

 ぜひ初見の方にはフラットな視点で、既に観たことがある方は、改めて自分の視点がどこに置かれているのか、意識したうえで見直してみてください。

 

 次にご紹介したいのが

「路上のソリスト」

 制作:2009年 アメリカ

 主演:ジェイミー・フォックス、ロバート・ダウニー・jr

 

 ロサンゼルスタイムスの連載コラムを映画化した作品で、主演の2人は「デュー・デート」という異色のコメディ作品でも共演しています。(個人的にはこっちの方が好きかも)

 

 あらすじとして――

 

 ロサンゼルスタイムスの記者をしている主人公は、ある日路上で2本の弦しか残っていないバイオリンを弾くホームレスの青年と出会います。彼を題材にした記事は反響があり、読者から彼宛てに応援として新しいチェロが届くほどでした。自身の記事に手応えを感じた主人公は、ホームレスの青年を記事にする見返りとして住む場所や演奏会の場を提供していきます。しかし統合失調症である青年は次第に主人公の支援が重荷となり、演奏会の場では極度の緊張から逃避を選択します。

 

 結末はぜひ映画を観ていただくとして―――

※イラストは映画と関係ありません。


 実はこれ、私たち支援職がついやってしまいがちなことでもあります。「パターナリズム」や「専門職的価値観」と言われることがありますが、平たく言うと「価値観の押し付け」です。もちろんその支援の根底には「良かれと思って」というものもあるのですが、相手の立場に立たず、自己決定を尊重しない支援は支援職の自己満足でしかありません。一見、非合理的であっても「その人らしい生き方」を互いが認め合うことこそが、「地域共生社会の第一歩」であったりします。

 今回は2本の映画を紹介させていただきましたが、ベテランの方も、今現在福祉を勉強している方も、たまには肩の力を抜いて映画の世界から自身の仕事や道を見つめ直してみませんか?

 

 4月某日―― ボガート・スタイルで煙草を吸いながら

 

※イラストはボカートではありません。

社会福祉法人 有隣協会 

 

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